
プロダクトデザインとUXのつながり
プロダクトデザインとは、モノとしての形状や機能、材質などを考慮して製品を設計する行為を指します。一方でUX(ユーザーエクスペリエンス)は、ユーザーが製品やサービスを利用する際に得られる体験全般を指す概念です。形や色、使いやすさなどの「デザイン」だけでなく、心理的な満足感や購入後のサポートなど、広い観点を含みます。プロダクトデザイナーがデザインを考えるうえでUXを無視することはできません。実際に手にした瞬間から廃棄やリサイクルの段階まで、ユーザーの視点に立ってすべての工程を設計することが、現代のプロダクトデザインには求められています。
クライアントのビジョンとユーザー体験の両立
プロダクトデザイナーは、クライアント(企業やブランド)が目指すビジョンや戦略を踏まえながら、最終的にユーザーにとって魅力的かつ使いやすい製品を形にしなければなりません。クライアント側としては、「ブランドを印象づけるデザイン」や「市場での差別化」を強く意識することがありますが、ユーザーの求める機能や使い勝手を犠牲にしてしまうと、結果として売れ行きや満足度の低下につながる恐れがあります。そこで、デザイナーはユーザーリサーチやテストマーケティングなどを通じて、実際の使用場面を具体的に想定し、企業の意図を叶えながらもユーザー体験を高める施策を検討していきます。
UXデザインプロセスの重要性
UXデザインプロセスには、リサーチ、アイデア創出、プロトタイピング、ユーザーテスト、改善といった段階があります。このプロセスをきちんと踏むことで、机上だけでは捉えきれないユーザーのニーズや潜在的な課題を発見できるのです。たとえば、デザイン検証用のモックアップや試作品をユーザーに触ってもらい、そこで得られたフィードバックを次の改良に活かすといったアプローチが一般的です。プロダクトデザイナーがUXの視点を取り入れることで、見た目のインパクトだけではなく、「使いやすい」「わかりやすい」「所有する喜びがある」といった包括的な魅力を高められます。
今後の展望
デジタル技術が進む中で、物理的な製品とデジタルサービスの融合が進む時代です。スマートホーム家電やウェアラブル端末など、ハードとソフトの境界があいまいになる事例が増えており、プロダクトデザイナーにもUX領域の知識や経験がより強く求められています。UI(ユーザーインターフェース)デザインやサービスデザインとの連携が重要視されるシーンも拡大しており、実際に企業の求人要件にも「UXの知識」「ユーザー目線での検証能力」といった項目が増えています。これからのプロダクトデザインは、UXを含む多面的なアプローチを取り入れつつ、人々の暮らしを豊かにする製品づくりに貢献していくでしょう。